第8回 南極便り

南極便り第8回は「白夜」と「夏の景色」についてです。
南極の冬は極夜、夏は白夜と極地ならではの現象に昭和基地のみなさんのご苦労も多いようですが、地球影やグリーンフラッシュなど、たくさんの幻想的な美しい自然現象を見ることができるようです。

「白夜(びゃくや)」と「夏の景色」

白夜の氷山の写真

 

 前回は「昭和基地周辺で見られる動物」について紹介しました。今回は「白夜」を紹介します。

 南極便り第4回では、一日中太陽が出てこない日を「極夜(きょくや)」とお話しました。昭和基地ではそれと反対に10月末あたりから、暗い夜はなくなります。これを天文用語で「天文薄明(てんもんはくめい)」といいます。「天文薄明」とは「空の明るさが星明かりより明るい」目安であり、日本では日の出前・日の入り後2時間程度の薄明時のことを言います。そして一日中太陽が出ている日もあります。これを「白夜(びゃくや)」といいます。このようなことが起こるのは、地球のまわっている軸が傾いているからなのです。白夜の季節は明るいので、なかなか寝付けないとか、体のリズムが狂う感じがします。

 

参考:環境省 なんきょくキッズHP

夏の転がる太陽

白夜前日 2016年11月20日撮影


「白夜前日 2016年11月20日撮影」
撮影者:梅津正道 国立極地研究所提供

白夜 2016年11月21日撮影

 
「白夜 2016年11月21日撮影」
撮影者:梅津正道 国立極地研究所提供

沈まない太陽

昭和基地では11月下旬から1月下旬まで太陽が沈みません。

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「沈まない太陽」(二日間連続撮影)
撮影者:梅津正道 国立極地研究所提供

白夜の氷山

 10月と11月は1年の中で最もきれいな季節かもしれません。太陽の光がさんさんと降り注ぎ、空の青さ、氷山の白が一段と鮮やかに見えます。 氷山は太陽の光を反射します。日中、朝日、夕日と色々な色(オレンジ、ゴールド、ピンク、青白く)に輝き、とてもきれいです。

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地球影(ちきゅうえい)

 次に紹介するのは、「地球影(ちきゅうえい)」。11月の晴れた日、太陽が沈んだあとに地球影を見ることができます。日の出直前や日没直後に、太陽の反対方向の地平線の上の空に地球の影が空に見えます。南極は空気が澄んでいるため、地球の影(青色)と空の夕日(ピンク色)がとてもきれいです。またなかなか太陽が沈まないので、2,3時間はこのようなピンク色の空を見られるのも南極ならではの魅力です。10月中旬から11月中旬、1月下旬から2月下旬に見られます。

 

地球影と管理棟の写真地球影の写真

氷上輸送

 11月下旬から1月下旬までの2ヶ月間は太陽が沈みません。夜でも明るいので、外で作業することもできます。
 また12月末には58次隊の隊員が南極観測船しらせ(AGB5003)に乗って昭和基地にやってきます。1月に入るとしらせが船で輸送してきた食料や建築、観測物資、燃料(1年間の発電用と重機等)、そして我々57次隊が日本へ持帰る荷物(観測物資、廃棄物など)を夜中の気温が低くなる時間帯にそりに物資をのせ、雪上車で南極観測船しらせとの間の海氷上を輸送します。

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南極の氷

 他には、11月に広報用の南極氷を昭和基地近くの氷山から切り出して、箱詰めする通称「アイスオペレーション」があります。箱に詰めた氷は大きな冷凍用コンテナにいれて、南極観測船しらせで日本に持ち帰ります。氷山の氷は、普通の氷と違って、南極大陸で長年かけて積もった雪が押し固まってできた氷です。雪の隙間に入っていた空気が小さな気泡になって閉じ込められています。その氷が解けるときにパチパチと弾ける音がします。これが氷山氷の特徴です。この空気は数千年から数万年前の空気が気泡として閉じこめられたものです。

 

そうめん流し

 また、休日日課には昭和基地近くの氷山の傾斜を利用して、溝を掘り「南極名物」、通称「そうめん流し」を隊員みんなで楽しみます。そうめんやそばを流す時は、水で流すと途中で凍ってしまうので、ポリタンクに入れたお湯と一緒に麺を流します。南極ならではの楽しみです!

 

グリーンフラッシュ

 グリーンフラッシュは、日の出、日の入りの時に海上や山の稜線、氷山に太陽が見え隠れするときに見ることができます。グリーンフラッシュは光の屈折で見られるのですが、空気が澄んできれいでないと見ることはできません。

 

昭和基地を訪れたペンギン

 毎年、10月下旬頃から2月上旬まで、時々アデリーペンギンが昭和基地を訪れます。昭和基地に興味があるのか、ただの通過点として通りすがりなのかは、不明です。除雪や夏作業の忙しい時期に訪れると、癒やされますね。

 

アデリーペンギンの写真(基地前)1 アデリーペンギンの写真(基地前)2 アデリーペンギンの写真(基地前)3

2016年10月に福島市松川学習センターで開催された第59回松川地区文化祭イベント「ミニ南極展コーナー」で南極の氷が展示され、多くの方々が興味深く観ていました。
次回はいよいよ、南極便りの最終回となります。どんなお話かお楽しみに。
掲載は2月上旬を予定しております。

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