「日本のトップアスリートたちが福島市へ集結! 走れ、未来。第98回 日本陸上競技選手権大会」のタイトル画像

片平俊夫氏へ直撃インタビュー

第98回 日本陸上競技選手権大会の見どころについて

本大会は福島県で初めて開催されるわけですが、片平さんから見て「ぜひココを見て欲しい」というポイントを教えてください。

片平:国内の範囲と県内の範囲ってところがありますが、なんといってもまずは男子100メートルの桐生祥秀選手、日本人初の9秒台突入が期待されます。例年6月の福島だと追い風1.5メートル程度が多いので、完璧な仕上がりであれば期待できるだろうかと思います。
それと、20連覇を目指すハンマー投げに出場する室伏広治選手。アマチュアで20連覇というのはとてつもない記録ですし、本人も当初から本大会への出場を明言していましたから、間違いなく狙ってくるだろうと期待しています。

福島県大会実行委員長 片平俊夫さんの写真

片平俊夫(かたひら・としお)氏

順天堂大学卒業後、長年に渡って福島県
陸上界において活動を続けている。
第98回日本陸上競技選手権大会
福島県実行委員会会長、
福島陸上競技協会会長。

ウェブサイト:福島陸上競技協会

今回の会場となる「とうほう・みんなのスタジアム」は、走りやすい競技場ですから、記録も期待できると考えています。

男子勢でいうと、5月11日の男子800メートルで日本新記録を出した川元奨選手、それと200メートルの選手たちも元気です。県内勢の田嶋和也選手は小学校から長年陸上で上位で活躍する珍しい選手ですから、そういう意味でも楽しみです。400メートルハードルの記野友晴選手も高校インターハイ優勝ですので、入賞するでしょう。

あとは棒高跳びも最近になって5メートル70センチ程度の記録も出てきていますし、面白い勝負が期待できると思います。長距離だと星創太選手、村上康則選手、今井正人選手なども楽しみです。

女子勢でいうと短距離なら福島千里選手、渡辺真弓選手、大東文化大学の土井杏南選手の三つ巴あたり。400メートルはもちろん日本記録保持者である千葉麻美選手、復帰して2年トレーニングしてきてるが、最後の数十メートルの踏ん張りどころがポイントですね。

400メートルハードルでいえば久保倉里美選手が筆頭、それと青木沙弥佳選手、吉田真希子選手などです。それと三段跳びの吉田文代選手、ハンマー投げの佐藤若菜選手も61メートルを投げれば上位入賞も可能でしょう。福島大学勢でいうと、走り幅跳びの五十嵐麻央選手、6メートル30センチ飛べば入賞圏内ではないかと思います。

大会開催に向けて気にしているのは天候ですね。陸上で雷は競技中断になりますから…毎日お参りしているんです(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸上への想い、福島への想い、復興への想い

本大会は初めて福島県で開催されるわけですが、東日本大震災後の3年間も含め、ここに来るまで大変なご苦労があったと思います。その部分をお聞かせいただけますか?

片平:平成23年3月に震災がありましたが、当時予定されていた次年度の陸上競技大会開催をどうしようかと、同じ3月に福島陸上競技協会で協議したんです。開催は難しいだろうという声がありましたが、だからといって開催中止となれば、余計に良くないと思ったんです。そのため、まずは放射線の影響を医療関係者などから確認した上で、避難している選手たちの登録状況を確認しました。

避難した選手たちは着の身着のままで避難したため、運動用衣類、運動用具もない状況でしたので、陸協としてはスポーツ・メーカーに掛け合って、それらの品を提供する活動をしました。予選大会は、相双地区の選手に限ってはストレートで県大会に出場できる措置をとり、ほぼ災害直後の年間予定計画をこなすことができました。

その後、今後の復興のためにどうするのかという話しになった時に、「日本選手権を福島に持ってきたらどうだろう?」と発言してみたんです。福島の復興を1日でも早めるためには、全国からたくさんの人が福島に来ていただいて、福島の現状をよく見てもらうことが大事だと思ったからです。設備なども含め環境を考えると「実際そんなことができるんですか?」という話しになりましたが、協会としてのコンセンサスを得て、平成24年2月、福島陸協の理事会において招致する方向性を見出しました。

大会開催には大型映像装置やスタジアム形式など設備面などの条件があり、「どうするんですか?」という話しになりました。東邦銀行がチームを結成しましたが、選手たちの素晴らしい活躍を見るにつけ、何とかこの水準の高い競技力を県民に披露するチャンスを作れないか、また、東邦銀行の選手たちが全国の一流選手と肩を並べて堂々と戦う姿を見せられたなら、皆さんの心が励まされるのではないか、と思ったのです。そして、東邦銀行の選手に「日本選手権が福島県で開催されたらどう思う?」と尋ねたところ「ぜひ出場したい!」という返事だったので、「そういう気持ちがあるなら、よしやってみよう!」という気持ちになったのです。

また、当時日本陸上競技連盟の会長だった河野洋平さんの叙勲祝いの席でお会いしたときに福島の状況を聞かれ、子供たちの屋外運動の制限などがありスポーツ界の前途は厳しい旨をお話ししてから、「そのために大きなイベントを福島で開催したい」と言ったら「復興に向けて陸連としても協力したい」と言ってくれました。

環境条件の整備については、福島県や福島市や福島商工会議所など関係各所の協力を得て、平成24年12月、日本陸上競技連盟の理事会で福島開催が決定しました。

 

今回の開催にあたって大事だと思うことは、円滑な競技運営は当然ですが、たくさんの観客による会場の盛り上がり、そしてその熱い雰囲気の中で選手たちがたくさんの日本記録や好記録を連発してくれることにより、「福島は大丈夫!」と感じていただければ大成功だと思っています。

そして、地元選手の活躍で県民の皆さんが少しでも前向きな気持ちになっていただければ嬉しいと思います。