ススム除染活動3 除染が済んでのお話を聞ききました

南向台

今は、線量も下がってきたことから、少しずつ前の暮らしに戻れるよう努力をしています

福島市南向台自治会 会長 穴澤健夫 さん

福島市街を見下ろす「ふれあいセンター」

福島市街を見下ろす「ふれあいセンター」

 南向台での除染作業は数度にわたり福島市による説明会が開催された後、2012年4月からスタートしました。2012年12月には一次と二次の除染作業で約1,200戸の除染がほぼ完了しました。南向台地区には、現在、5カ所の文部科学省のモニタリングポストが設置されています。地区全体でも数値が下がってきたという認識があります。道路・側溝・林地が残っていますが、目標としては1マイクロシーベルト毎時を下回るまで。そして5年間で0.23マイクロシーベルト毎時(1年間のトータルが1ミリシーベルト以下となる数値)までと、先の目標を見ているところです。

 

 

 

 

 

除染に向けて

 2011年10月に除染の話が出て、渡利地区での説明会が行われましたが、夜の7時から12時まで5時間もかかるものでした(10月8日実施)。除染は、すぐに取りかかることができたわけではありませんでした。地区内では、南向台の空間放射線量はどうやら高いらしいという情報を得ていましたから、実際の状況を知るため、自治会として、独自に1台7万円位の測定器を購入していました。また、わたり病院の渡邉先生に講師をお願いし「放射線を知ろう」という講演会を南向台自治会独自で開催して放射線に関する理解を深めました。並行して市から、3台の測定器を借りうけ、計4台を使って各自、自分の家はどうかを測定していました。7月には、自動車サーベイメーターでの測定が行われていたということもあり、南向台地区を特定避難勧奨地点に指定しないのはなぜか、避難するべきだという認識が強かったのです。

実施検討会議の写真

実施検討会議

 10月の説明会の後、11月5日には国により、南向台地区について「特定避難勧奨地点」に設定しない旨を説明する説明会があり、線量の数値が前提であること、南向台の数値がその高さではないことの説明がありました。しかしその時点でも除染についての話はほとんど出てこないほどでした。1月まで、2カ月半をかけて、渡利地区全体の役員が市と複数回の打合せや説明会を開催し検討を重ね、市主催の役員説明会を開きました。その後、自治会役員や班長さんに除染作業内容の説明をしましたが、一方では除去した土砂の保管を自宅にすることを不安に思う方が多数ありました。仮置き場が未定であり、一時保管の期間も未定という状況だったということもあります。市の説明会は何回も実施され、その他にも調整は必要でした。

 

 

 

 

 

宅地内の除染の様子の写真

宅地内の除染の様子

 そうする頃、2月になると渡利では除染作業が始まり、南向台地区でも住宅より先に南向台小学校と公園など公共施設の除染が始まりました。除染作業の実例を実際に見る機会となり経験ができました。地区の方々が、苦しいながら決断をして少しずつ進んだように思います。

 

 

 

 

モニタリングポストが設置された第1公園と、隣接する南向台小学校

モニタリングポストが設置された第1公園と、
隣接する南向台小学校

 除染の優先方針により、標高の高い南向台、希望が丘、絵馬平を含む渡利地区717戸の一次除染区域は2012年2月から除染作業が着手されましたが、南向台地区の住宅除染作業は4月からの着手となりました。引き続き6月に二次除染の説明会が南向台地区で開催され、住宅地図で除染の順序や除染作業の内容などについて説明があり、8月から着手されました。

 

 

自治会の団結

 南向台自治会では、運動会、文化祭、夏まつり、芸能祭、新年会など親睦を深める行事はよく行ってきました。3月11日の地震により、宅地に亀裂が入ったり、崖が近くて崩れを心配する場所の方などが、小学校へ避難しました。しかし断水して、翌日給水車が来ると、住民の方の協力で給水活動や交通整理が始まったり、浪江・双葉の方々が避難してこられると、小学校の給水塔の水・電気・ガスで炊き出しを始めました。不足している物資をハンドマイクで呼びかけ、団地内をまわって集めるという動きがでました。南向台は新しい街で、野菜を作っている農家もありません、野菜、米、味噌、醤油、みなさん買って食べる方々です。初めは集めに行きましたが、しだいに届けてくださるようになりました。体育館には、もう10回位は避難所を移転している方ばかり、最多では300人位になっていたでしょう。人ごととは思えない、そのような気持ちから住民の方たちの団結力や行動力が発揮されたのだと思います。
 そういうつながりは、除染に向う一連の対応の中でさらに強まったように思います。